アナログの熱狂と失われた時代——「バレンシアガ」が90年代に着目 22年フォールコレクション
バレンシアガ(BALENCIAGA)」から新作コレクションの招待状として届いたのは1本のビデオテープ。AAAKOPI過去の遺産を閉じ込めた標本のように、プラスチックケースに収められていて開けることはできない。ラベルに記された「The lost tape(失われたテープ)」は、今回の2022年フォールコレクションのテーマ。コロナによって加速したデジタル化の波に逆行し、見つめ直されるアナログの熱狂と生感。忘れ去られた時代を掘り起こし、今のデムナ(Demna)ならではのツイストが加えられた。
バレンシアガ2022年フォールコレクションの映像を手掛けたのは、バレンシアガ コピー「KIDS/キッズ」や「ガンモ」などで知られる映画監督のハーモニー・コリン(Harmony Korine)。ファッションショーの招待客が続々と入場するシーンから始まるが、低画質でノイズが走り、一昔前のVHSビデオを見ているように錯覚する。
アーティスティックディレクターのデムナ(Demna)が着目したのは1990年代後半。創業者クリストバル・バレンシアガの亡き後、メゾンが低迷し栄光が失われていた時代に息を吹き込むように、過去と現在を交錯させている。
進化するアイコンと過剰なシルエット
バレンシアガのショーの常連モデル、エリザ・ダグラス(Eliza Douglas)によるブラック一色のファーストルックで特徴的なのは、パンツとブーツが合体したパンタブーツ。トップスはグローブ付きで、首から下の肌を全て覆うような仕立てとなっている。その後に続くルックもブラックがベースで、肩幅が目立つビッグサイズもあれば極端にタイトなフォルムも。過剰なシルエットは、レイバーとポストグランジを解釈したという。
バスクジャケットやトラックスーツといったバレンシアガのシグネチャーを進化させ、アイコンアイテムはモダンで着心地を重視した服へと再考。パファージャケットの首元にはトラベルピローが取り付けられ、色落ちしたジーンズはミニスカートとサイハイブーツとしても着用できるようにリメイク。前後逆のジャケットやツイードドレスがユニークだ。DIY感覚の安全ピン、分解してつなぎ合わせる手法、チビTにアンダーウェアのウエストを覗かせたローライズパンツといった、90年代を連想させるディテールやスタイルも登場した。
Courtesy of Balenciaga
バッグやシューズも90年代調に
バッグやシューズも90年代調に
新作のサイハイウェーダーブーツ「Excavator」は、カウボーイブーツから着想。スクエアトゥのバレリーナシューズ「Kensington」はユニセックスでスリッパのように着用できる。
バックル付きのクラシックバッグ
Emo Bag
Courtesy of Balenciaga
定番の「Balenciaga Classic」は、90年代のバックル付きバッグにインスピレーションを得て再解釈。フェイクレザーを編み上げてメタルチェーンと組み合わせた「Metro Bag」、無数のハトメが施されたストラップが目を引くストーンウォッシュレザーのバッグ「Emo Bag」など、アクセサリーにはパンク要素が加わった。
ショーのバックステージ Courtesy of Balenciaga
ランウェイの映像の後に流れたのは、バックステージでシャンパンを傾けるデムナとモデルたちの姿や、ジャーナリストのDiane Pernetなどがコレクションを褒め称える様子。シュールな映像の中に、古き良き時代のポジティブさが眩しく映った。
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